甲斐犬のお話・Q&A
平成23年4月迄のQandA
最近甲斐犬のブログを見ていると、白い甲斐犬とか茶色の甲斐犬とかが出ていますが、貴会ではどう判断されているのでしょうか。個人的には甲斐犬は、黒虎、中虎、赤虎の3種類しかいないと思っていますが、ご意見をお伺いしたいと思います。
(神奈川Yさん)
Yさんが仰る通りです。何故なら血統書が登録出来ないからです。よく「うちの甲斐犬は血統書がない」と平気で謂う人がいますが、それは甲斐犬モドキであって甲斐犬ではありません。人で謂えば住所不定、無職のホームレスと同じで違いは、犬は人に飼われている分住所はあっても人で謂えば住民票、戸籍がないと謂うこ とに他なりません。
つまりどんな立派な犬でも所詮甲斐犬モドキに過ぎません。そして白一枚や赤一枚の犬は、親が甲斐犬の血統書があっても甲斐犬ではありません。まして50年も前の話なら放し飼いが当たり前の時代ですから、白一枚や赤一枚の犬との自然交配も理解しますが、現在において白一枚や赤一枚を甲斐犬と呼ぶべき ではありません。
家族の一員として飼うのであれば何も文句も出ないはずですが、自ら甲斐犬と呼ぶことは遠慮すべきです。そして白一枚や赤一枚の犬を例え一万円で売ったら、詐欺行為の何物でもありません。はっきり謂って甲斐犬ブリーダーとして恥さらしです。
甲斐犬では「舌斑」のある個体がよく見られるようです、舌斑についてそちらの団体ではどのような認識でおられるのか?
また、展覧会などにおいてどの程度までが許容範囲なのかそのような規定があるのかないのか?
柴犬や四国犬などでは嫌われる傾向にありますが、舌斑と犬の本質そのものに何か影響が出るものなのでしょうか?
以上、お手数ですがよろしくお願いします。
(島根Kさん)
舌斑のご質問ですが、確かに甲斐犬は全般的にこの舌斑のある犬が多いのは事 実です。舌斑がない犬を捜すほうが困難だといったほうが正解でしょう。 どの程度が許容範囲かと謂うことになりますが、展覧会では牛の舌のように青 一枚であれば、本来1席、2席の犬でも4席までです。
最近の犬は舌斑も以前と比べれば、大分少なくなってきているのが現状です。 しかし、大小の違いはあっても、有って当たり前との感覚が普通です。個人的には、親指大の範囲で1〜2ヶ所位有るのがベターだろうと考えます。勿論ないのが良いのですが、これは犬種の特徴でもあるわけです。
舌斑と犬の本質は関係ありません。私個人は、柴犬は人が完全に作った犬との 印象を受けます。体高を固定化すればどうしても体型も同一化するのだと思います。
遺伝的要素もありますから、舌斑の多い犬には少ない犬を掛けるように皆さん 考えて交配していると思いますが、皆無とはいかないのが現状です。
甲斐犬は虎毛が特徴ですから、毛色等との関係もあるのかもしれませんが赤 い部分が多少でもあれば気にする人はあまりいないのが甲斐犬の飼い主です。
見た目には良いものではありませんから、少なくする努力はして行くべきであろうとは思います。
結論ですが、舌斑は無いのが良いですが、有っても当たり前ということです。
「無許可の業者が子犬を売っていて、真面目に許可を取った我々が子犬が売れないという現実はおかしいと思いますが、何とかなりませんか?」
(山梨Yさん)
中には血統書のない犬を五万円で売っている者もいると謂います。私の所にも以前子犬が欲しいと電話が有り、「結局値段の折合いがつかずそのままになってた人から電話があり、三万円で子犬を買ったが、その後相談しても相手にしてもらえないので、小林さんに相談してもいいですか?」とのことで、何度か相談に乗ったことがあったのですが、アホらしくなってきたのでやめました。
値段で子犬を判断する傾向が昨今のネットの普及以来非常に多くなっています。以前であれば、「出来の良い子犬を下さい」とか、「値段は多少高くても構いません」とか、「是非、小林さんがお勧めの子犬を下さい」、という人が多かったのですが、最近は開口一番「いくらですか?」という人が多い。
上記の無許可業者も悪いのですが、値段で子犬を買う方も五分五分だと思います。三万の犬は三万の価値しかありません。それで満足ならば大変結構なことですが、安い子犬に限って問題も生じやすいのも事実です。それで私に相談というのもお門違いというものなのです。本当に困っている様なら相談にも乗っていますが、結果は当事者責任です。
先ず子犬を飼う時には、動物取扱登録の許可を受けている所から購入するのは当たり前で、無登録者からの購入はトラブルの元、解決するには警察に被害届を出すことしかありません。しかし、原則民事不介入なので受理するかは警察次第、受理されても調書を何時間も取られたり、何度も警察に出向かねばならず、労力もいるのも事実です。
三万、五万で買った犬にそこまで労力を使うでしょうか?まずしないでしょう。安易に値段で子犬を買うと逆に高くつくということなのです。知人・友人がたまたま良犬を飼っていて、その子犬を貰えるという運の良い人は極まれな人でしょう。普通はどちらかの業者で買うしかありません。過去に捉われるだけでなく、今の実績もある所を選ぶことが肝心です。
犬の寿命も十五年以上になってきています。三万円の犬と十五万円の犬では、その差十二万という金額以外に大した問題ではないと思う方もいますが、それはどうでしょうか。「これ甲斐犬ですか?」と聞かれるのと、「良い甲斐犬ですね」と言われるのでは、どちらが良いのか。そして甲斐犬等の犬種にとって一番は交配・出産が可能で、将来がある子犬が得られるということがとても重要なのです。
悪徳業者が安く売る子犬は、交配や種オス・台メスには向かない犬であり、甲斐犬の質の向上には何の興味も貢献もない、私利私欲だけの自己満足ビジネス道具でしかありません。しかし、飼う人のニーズであれば、「五体満足なら良犬でなくても・・」というのも仕方がないとも思いますが、アフターケア、購入後のトラブル等を考えた場合、悪徳業者に加担しない方が絶対賢明です。
姿芸両全ということを説明されていますが、品評会用の犬は品評会用に、猟犬は猟犬用に躾けや訓練をすれば良いと思いますが、違いますか。又品評会用の犬を猟犬で使って怪我したら、品評会に出せなくなると思いますが、どうなのでしょうか。
(神奈川Kさん)
小池さんの考え方が、大方の人の意見だと思いますし、それはそれで良いのではないでしょうか。これはあくまでも私の甲斐犬を飼う上でのモットーとするところで、私個人の見解にすぎません。展覧会用の犬に、どこまで猟欲を求めるかという程度問題にもなりますが、私個人で一番嫌いな犬はと聞かれたら猟欲のない犬が一番嫌いです。鳥や獣をみても無反応、展覧会でいくら上位にいる犬でも、日本犬としての本質に欠けると思います。そういう犬は飼っていても物足りなさを感じます。勿論犬を飼う住環境で違いますが、自然に恵まれた所では、雉を追いサルを追い鹿や猪を追って当然ではないでしょうか。その犬としての当然さがない犬が私は、嫌いだと言っているに過ぎません。私も展覧会を中心に活動していますが、上位入賞した犬でも、猟欲もなくただ可もなくなく不可もない犬には何の魅力も感じませんし、そく里親さんを捜します。(ただなら、番犬に貰ってやらあ)という人は結構いるもんです。小池さんのご指摘の通り、山へ入れると怪我もするしダニも付きますが、それは当然のことです。人でさえ怪我をしたり事故にあったりすることを予測して生活している訳ではありません。(普段から用心している人はいるでしょうが)展覧会用の犬なら、展覧会前には山に入れなければ良いわけです。犬を飼うにも人其々の考えがあってよいと思いますので小池さんはご自身のお考えで犬を飼えば良いことと思います。
そちらで買った子犬ではないのですが、質問していいですか?今、生後60日位の子犬がいますが、家へ来て4日目ですが今朝ウンチに白い虫が沢山混ざっていて驚きました。虫のことは聞いていましたが、虫下しを飲ませればなおりますか?
(東京Aさん)
稀に室内で飼われて居る犬や都会で飼われている犬の子犬に虫がいない子犬もいますが、外飼いの犬や山や河川などで放し運動が出来る環境の犬は殆ど虫がいると思って間違いありません。大体は繁殖者の所で虫下しを飲ませ、虫が切れたのを確認してから新しい飼い主さんに渡すのが普通です。二度程虫下しを飲ませれば大体はなくなりますが、綿棒でウンチを取り(ほんの少量)子犬と一緒に獣医に検便をしてもらえば虫の種類が分かります。一番多いのが鞭虫で白く細長い寄生虫ですが、簡単に駆除できる寄生虫です。朝夕二度薬を飲ませればそれで切れます。他の寄生虫だとこの薬では効き目がないので、獣医に検便をしてもらいその寄生虫にあった薬を飲ませることになります。子犬をみて腹部が張っていたり、下痢をしたり急に元気がなくなったりの症状がでたら寄生虫がいると思って間違いありません。子犬の場合2〜3日様子を見てみようと考えてはだめです。又市販の薬もありますが効き目が弱いのでお勧めできません。繁殖者の中には、甲斐犬は虫がいて当たり前だから虫下しなんか飲ませるな、というアホもいるようです。成犬には殆ど虫がいると思って間違いありませんが、子犬は成長に悪影響を与えますので、絶対駆虫が必要です。(私も成犬には駆虫しません)
甲斐犬愛護会の東京支部は無くなったのですか?
(神奈川Kさん)
その通りです。一昨年の甲斐犬愛護会の総会にて、柳沢さん(娘さん)より東京支部を辞退したい旨、役員の皆さんに話があったとのことです。私も、毎年総会には出席していますが、その日は故柳沢琢郎氏への一分間の黙祷が出席者全員で捧げられました。その日は東京支部辞退の話は役員の皆さんだけで、会員の人達はまだ知りませんでした。私も後日知りましたので、本部に確認を取りました。東京支部は支部の活動というより、故柳沢琢郎氏個人の甲斐犬愛護会への実績と功労が認められていたということなので、柳沢氏亡き後、ご家族もその辺を考慮されて、東京支部の辞退となったのだろうと推測します。Kさんもご存じの通り、昭和42年「甲斐犬」という書籍で有名な人でもあります。犬の月刊誌や犬関係の本でも取材記事やエッセイ、寄稿文を書かれています甲斐犬の大先逹です。私個人的には会った時に挨拶するくらいのお付き合いしかありませんが、東京の中野には二度伺っています。その時に「小林さん猟をやって下さい。」と言われたことを今でも覚えています。私は展覧会中心に活動していますが、源友会に狩猟部門が設けてあるのも、柳沢氏の一言があったからです。甲斐犬と甲斐犬愛護会にご尽力された故柳沢琢郎氏に、改めてご冥福をお祈りいたします。
中虎の牡を今飼ってるのですが、近所にも中虎の牡を飼ってる人がいて、散歩の途中でその人と話しをしたのですが、「甲斐犬の赤がビール瓶の色が本当だ」と言います。たしかにその人の犬はキレイに赤と黒が半々の様な中虎です。が、甲斐犬の赤は「ビール瓶の色」が本当なんですか?
(神奈川Mさん)
この虎毛の問題が質問の中で一番多いのですが、結論を言えば、「嘘も本当ない」という事になります。前回もHP上で説明したのすが、兄弟犬でも毛色の濃淡の差はある事で、特に色ボケが大きいのは関心はしませんが、その他は許容範囲の犬が殆どだと言う事です。確かにビール瓶の色の赤はきれいです。それは我々には作出できないのです。それは他団体の種を貰うという事になり、愛護会の主旨に反するからです。甲斐犬愛護会が中虎毛と認めた以上、それで十分なのです。虎毛にこだわって作出しようとするなら別ですが、私は着物にこだわる以上に、犬の本質とか性質などにこだわりを持った方がいいと思います。又、着物だけで犬を選ぶのは間違いの元です。
甲斐犬の仔犬の価値はどういう基準で決まるのですか?甲斐犬のHPを色々見ても、5万円から20万円位の価格の差があるように思いますが、私が思うには10万円以上がショーや展覧会の犬で、家庭・番犬の犬が10万円以下なのだろうと考えますが、では10万円と20万円の差はどうしてなのか、その辺のところがいまいち理解できません。私は自分で理解、納得したら20万円でもいいと思っています。突然に犬の値段の事で申し訳ありませんが、教えてもらえますか?
(大阪Hさん)
犬の質問の中で2番目に多いのが、この犬の価格に関する事です。犬の値段は当然ブリーダー、或はペットショップが独自に決めるのですが、ペットショップや通販に関しては一切関知してませんので説明外とします。一頭の仔犬がいるとします。私は10万円の値段を付けました。又、Bさんは同じ犬を5万円と付けました。ではなぜ5万円の差がでるのかと言いますと、もしBさんが仔犬の目利きに自信がなければこうなります。「10万円の価値ある犬だろうと思うが、後でクレームでもきたら困るし、売れ残るのも嫌だし5万円が妥当かな」となります。その結果として同じ仔犬で5万円の差がつく事になるのです。これは新しい飼主さんが良い買い物をしたという事になりますが、その新しい飼主も当然その仔犬の価値が分かれなければただのポチで一生終える事になります。それは甲斐犬界の向上に何の役に立たない、宝の持ち腐れという事になるのです。又私が許せないブリーダーは勘違いをしてる人達。「俺は犬屋じゃないから犬で儲けようとは思ってない」だの、「あいつは犬屋だから」等、善人ぶる偽善者達です。ではその人達の作出した子犬が、血統書にも勝れ将来性があり、上位入賞間違いない仔犬がいたとしたら欲しい人に「犬屋じゃないからタダでいいですよ」「1万円でいいですよ」とは絶対言わないはずです。犬を一頭でも売れば立派な犬屋です。5万円の価値の犬を10万円で売ったり、10万円の価値の犬を5万円で売る事は、甲斐犬という犬種自体の価格を下げるだけなのです。犬という生き物でも値段が付けば、当然商品の流通と同じです。犬を売る価格の基準とは仔犬の目利きにつきるという事です。私は甲斐犬という未だにメジャーではないこの犬種に惚れ込み、多くの人に知ってもらい認めてもらえるようにとの気持ちでブリーダーをやっています。その為に私なりに勉強して、先輩達の教えを頂き、今日迄きました。私の甲斐犬飼育暦28年間で常に10数等の甲斐犬と生活し、仔犬は1000頭以上見てきました。なので私は、仔犬は両親犬の血統と、その仔犬の将来はこうなるだろうとの判断で、自信を持って価格を決めています。
仔犬を見て、この犬なら将来ショーや展覧会で活躍できるか、ショーや展覧会に出さなくても良い犬になるかという見分け方やコツみたいなものだあれば教えてもらえますか?
(大阪Nさん)
ウーム、これは経験しないと分からないというのが本音なのですが、飼う目的がどこにあるかで違います。家庭犬、番犬、狩猟犬で飼うなら、足が4本、尻尾がついていて健康であればそれで良いことになります。(人も顔じゃないよ、中身だよ。)但、顔が悪いから中身が良いとも、顔が良いから中身が悪いとも言えませんので悪しからず。良犬とは一言で言えば「姿芸両全」につきます。因みにどんな犬でも番犬になります。知らない人が我家に近付けば犬の習慣というより本能ですから、家庭犬だろうが展覧会用の犬だろうが同じです。例外的にまった吠えない犬もいますが、あくまで例外です。「牡を飼っているが全く吠えないので番犬にならない」と相談する人もいますが、私は「生後1年過ぎれば吠えるから心配ないですよ」と説明します。事実その通りになります。又、自宅へお客様が来ても、帰るまで吠えてるバカ犬もいます。大体が鎖で一日中繋ぎっぱなしか、犬舎へ入れっぱなしの犬です。犬が欲求不満のストレスを吠える事で解消しているから、飼主が止めてもまた吠え続けます。要は犬ではなく飼主の問題です。では良犬の仔犬の見分け方ですが、電話ではよく「見当したいので仔犬の写真を送って下さい」という人がいますが、実物の仔犬を見ても良し悪し分からない人が写真を見て分かる訳がないのです。私は「写真は送れないが、私を信用してもらうしかありません」「できたら仔犬を実際見て決めて下さい」と説明します。ですから私の犬舎ではいつでも見学自由です。良犬を求めようとするなら相手のブリーダーを信用するか、実物を見て決める事です。写真で決めるのは絶対お勧めしません(ポチで飼う場合は別)。さて、仔犬選びの決め手の続きとして、一般知識として健康で明るい性格、呼べばすぐ近付いてくる等でいいと思いますが、目に力があるかどうかも重要な点です(上目使いや目を伏せる等)。大事な点として顔があります。牡は牡顔、牝は牝顔が基本ですから、牝なら顔の良い仔、キレイな整った顔の仔を選べは良いのですが、牡は牝と同じでキレイで整った顔より、多少不細工な顔を選んだ方が良いと思います。その場合、上唇が垂れ過ぎてる犬は駄目です。これ等はあくまで成長してからを考えての事ですが、牡らしい顔は単に不細工とういう事ではありません。言い替えれば「牡らしい顔」という事です。キレイで整った牝顔で牡を選ぶと成長した時点で「可も無く不可もなく」の犬になるからです(人間で言えば中性的ヤサ男)。次に持ち上げてみて見た目より思い仔犬を選ぶ事。見るからにおデブちゃんでダブダブの犬は感心しません。持ち上げた時に大人しくしていられる仔犬を選んで下さい。展覧会用の犬には大事な点です。仔犬を降ろした時は、瞬間キョトンとしますが、直元に戻ってジャレる仔は気性も良い仔です。おデブ犬の事ですが、丸くて可愛らしく見えますが、成長してもおデブになる事が多いという事と、ブリーダー自信が売りやすいとの事で太らせる場合もありますが、私は本当に感心しません。私は仲間でもポチで飼ってる人は何も言いませんが、展覧会に出す犬にはうるさいくらいに「犬を太らすな」と注意します。これは体型、体格を言ってるのではありません。がっしりした猪犬タイプでも同じです。適度の運動と食事量で改善されるはずです。これ以上はノウハウ的な事もあり、経験者やブリーダーに聞いてみて下さい(教えてくれるかは分かりませんが)。それと私の所への見学に来られた人に「この犬はソコソコです」「マアマアです」と言うと、「はあ、ソコソコですか、マアマアですか」と気落ちした返事をするのですが、私の「ソコソコ」「マアマア」は展覧会で十分入賞が狙えると犬という意味です。私個人は展覧会で入賞が目的ではありません。あくまで一席であり、優勝であり、準優勝する事意外ありません。その結果が五席、六席でも仕方ないという事です。それは今後の参考にして、自分の犬を見る目が足りなかったからか、犬のコンディションが悪かったのか、犬の引き方が悪かったのかの反省材料となるからです。Nさんにも言っておきますが、初めて飼った犬が展覧会で一席、優勝等は宝くじに当たったという事です。長年甲斐犬を飼育した結果であれば飼主さんも立派という事ですから、「勝って兜の緒を締めろ」の気持ちが大切だろうと思います。それと良犬を求めるにはお金と運とタイミング、そして良いブリーダーや犬屋さんと知り合う事です。これは親切だとか好人物とかよりも、甲斐犬の実績があるか、甲斐犬に対する情熱と知識があるかという事です。
我が家では他犬種と共に甲斐犬も四頭程おり、甲斐犬の牝が出産したのですが、二日目の犬舎を見たら仔犬がいません。どうも自分で食べちゃったようです。甲斐犬は自分の仔犬も食べちゃうのですか?
(岐阜Tさん)
極稀ですがいます。これは甲斐犬に限らないと思いますが、生後半年以上で引き取った犬や、今迄と環境が変わったりした事でパニック状態になったりするためだろうと思われます。特にシャイッ気がある犬や野生の強い犬に見られます。こういう犬の出産の時は、他の犬が見えない所で隔離して安心して出産出来るようにすれば大丈夫です。今迄の経験で一頭の牝が出産して三日以内に飼い主が仔犬を見たり触ったりした場合、仔犬を全て殺すか食べてしまう犬もいました。この犬の場合野生が強いという事です。この犬の場合が生後五日程は母犬に任せると、その後は大丈夫でした。
もう一頭別の甲斐犬の牝の事です。今回三頭の仔犬を出産したのですが、うちは他犬種との多頭飼いですから、ちゃんと仕切って出産させているのですが、この甲斐犬が室内犬の親犬と仔犬、合わせて20頭全て噛み殺してしまい、その凄まじい光景に驚き本当にがっかりしてしまいました。甲斐犬には残虐性があるのでしょうか?普段は大人しくて人にも犬にも慣れている犬なのですが・・・
(岐阜Tさん)
甲斐犬の身の軽さ、敏捷性は他のどの犬種よりも抜きん出ています。ちょっとの隙間でもブロック塀でも、丸太でさえも渡ってしまいます。多頭飼で、まして他の犬種も一緒に飼育しているのであれば、なお更犬の管理は徹底して下さい。でなければ今回の様な事は又起こります。Tさんの場合、甲斐犬だけは他の犬種と一緒にしない事と、犬舎も鉄製にする事です。木製の犬舎やバリケン等、プラスチック製の物など簡単に破ってしまいます。今回の件は本当に残念で損失も大きかった事でしょうが、この経験を生かして管理だけは徹底して下さい。甲斐犬の飼う上での多頭飼は、管理の徹底しかありません。
代表、又問題が起こりました・・・。室内犬の親子全てを噛み殺した犬が、今度は成犬の牡のピットブルの鼻を半分噛み千切ってしまいました。犬の騒ぐ音を聞いてすぐ駆けつけて見に行ったら、ピットブルが鼻から血を流しているので、すぐタオルで拭いたら鼻が半分欠けてました。甲斐犬はとにかくスゴイ犬ですね、いや、もうビックリです・・・
(岐阜Tさん)
甲斐犬の牝は一頭二頭で飼っていると別に問題もないですが、多頭飼だとそうはいきません。一頭だと利口で無駄吠えせず飼い主も忠実で言う事のない犬種ですが、四頭以上となると「○○ちゃん、駄目ですよ」、なんて言ってる場合ではありません。それこそ犬達も真剣勝負。飼主と犬達とも真剣勝負でいかないと必ず問題が起こります。一頭だと「叱るより褒めろ」で通じますが、多頭飼では通用しません。褒めるにも順番があり、餌も順番がありで、犬達の序列を無視する事は出来ません。喧嘩を仕掛けようとする犬に「こらー、○○!」というように犬の名前を大声で掛けると犬は逆に飼主の声に刺激を受け興奮して攻撃します。又一頭の犬を他の犬達が一斉に攻撃して噛み殺すという事もあります。この場合、血縁関係の強い兄弟犬の中に、血の繋がりのない犬を一緒にした時に特に起こります。一度でもその事が起こる場合は、血の繋がりのない犬は一緒にさせる事はできません。何日か上手くいっても必ずやられます。出産直後の犬は他の犬に対して気が立っていますし、特に他犬種の場合は今回のようなピットブルの牡さえ攻撃することになります。普段シャイで他の犬より序列が下の犬でも、出産直後の甲斐犬の牝は相手が牡でも牝でも一歩も引きません。それが仔犬を守ろうとする母性ですから当然です。犬を叱るより飼主の管理不足を反省する事です。又甲斐犬牝としてこの本質がない犬はただのポチ、甲斐犬としての価値はありません。
今回初めて赤虎に近い仔犬が生まれたのですが(現在生後四ヶ月弱)、どう見ても蓑毛がないように思います。これはやはり欠点になるのでしょうか?それと牝の黒虎で虎毛がないただ黒一色の犬もいて、他の人が「これはカラス犬だ。甲斐犬は虎毛が歌い文句だから黒一枚は甲斐犬ではない」と言われました。その辺はどうなのでしょうか?
(岐阜Tさん)
一言で言えば蓑毛のない犬も黒一枚の犬も欠点です。ただ甲斐犬ではないのかと言われれば間違いなく甲斐犬です。ヨークシャーテリアを例に出すと、ショー用の犬の毛足は引きずるくらい長毛です。ですがペットショップのヨーキーは成長してもそんなに長く毛は伸びないものです。ペット屋さんで売ってる犬はあく迄ペットであって、ショードッグではないという事です。つまり甲斐犬も他の日本犬も同じ事です。展覧会で入賞しないのは、入賞した犬より欠点が多いためです。では入賞しないのが甲斐犬ではないという事になりますか。甲斐犬であっても、三十頭の犬の中で入賞は基本的に六頭迄、残りの二十四頭は甲斐犬ではない事になってしまいます、両親が甲斐犬で、その子が血統書があれば甲斐犬に間違いないのです。黒一枚のカラス犬でも立派な甲斐なのです。ではなぜ黒一枚の犬でも甲斐犬として認められてるかと言えば、黒虎の場合、生まれてすぐ虎毛の入ってる仔犬もいますが、黒一枚の仔犬が多いのです。生後10日、20日、30日と少しづつ虎が出てくるものです。中には生後一年近くしてやっと虎毛が出てくる犬もいるのです。黒虎の場合2才〜3才、犬が完全に成長する迄虎毛も完成しません。だから未成犬、壮犬クラスの犬でも黒一枚の犬が入賞するのです。審査員が現状だけでなく、将来性も見て判断しているからなのです。何か犬の本にも、専門家か評論家が知らないが、素人と同じ事を書いてあるのを読んだ覚えがあります。「最近の甲斐犬の展覧会で黒い犬が入賞するのを年々見かけるが、甲斐犬は虎毛があって甲斐犬なのだから、黒い犬はカラス犬か山梨犬と呼ぶべきだろう」・・・こういう甲斐犬の浅知恵で犬の事は何でも知っているつもりになっている、自称犬専門家の言に惑わされる事はありません。甲斐犬唯一の保存団体である甲斐犬愛護会の展覧会で入賞しない犬にも、甲斐犬として認める事で推賞犬のメダルを渡しているのです。そして黒虎同士の掛け合わせは難しさもある訳ですが、黒虎毛に良犬が多いのも又事実です。
そちらで犬を譲って頂いたのですが、我家に来た時が生後四十五日頃でしたが、知人が「犬は生後六十日以上九十日位迄、親と一緒の仔犬を飼うべきだ。四十五日では早過ぎるよ」と言われたのですが、どうなのでしょうか?
(静岡Kさん)
私は仔犬を渡す時期は甲斐犬飼育経験者では四十日、犬を飼った経験の有る人には四十五日から五十日、初めての人なら六十日を目安にしています。甲斐犬の場合九十日近い仔犬でも(固体差があります)飼主に慣れず、噛み付いたり餌を食べなかったりという事が多々あります。これは一代一主的傾向の強い犬に多く見られます。逆に社交性・社会性の乏しい犬と言えるかも知れません。しかしそれが日本犬であり、甲斐犬なのだと思っています。アメリカ等の統計でも、生後三〜四ヶ月迄親と一緒に育った犬には成犬になった時に問題を起こす犬が少ないとの結果があるのも知っていますが、それを日本犬に当てはめてもどうかと思います。参考にする事は良い事ですが、犬に対する目的も飼う意識も違います。日本の法律論は別として、では家庭犬で飼っている犬を、ノーリードでも、電車やバスの交通機関やデパート、役所等公共施設で自分の愛犬を連れて歩く自信の有る人がどの位いるのでしょうか。欧米人が犬を飼う目的は、その犬種の本質を引き出すというより(使役犬は別)、絶対的に人間社会の腹従の躾の結果での家族の一員という考え方です。日本の現状はどうでしょうか。「犬は家族の一員です」と言って、一日無駄なおやつを与え、仲間同士では「○○ちゃん、久しぶり」などと言ってるレベルの人に欧米並みの事ができるとは思わないし、私個人的には犬が家族の一員だなどとは思っていません。私のところに「今迄飼ってた犬が亡くなってやっとに四十九日を過ぎたので、今度は甲斐犬を飼ってみようと思い連絡しました」・・・とういう人が何人かいました。しかし、「私のところでは人並に四十九日の法事を済ませるような立派な犬はいませんので他を当たって下さい」と、断ります。「亡くなる」も「人並み」も、「四十九日」も、人に対して使う言葉であって犬に対して使う言葉ではありません。欧米人が四十九日の法事はしないし、死んだら速次の犬を飼うのも、日本人と犬に対する家庭犬といえど、目的意識が違うという事です。だから日本の、まして甲斐犬の先輩達が四十五日頃の仔犬が飼うのに良いと永年の経験で言っている事なので、何の根拠もないことではないでのす。私は今後も四十日から六十日の仔犬を譲渡の目安にしていきます。
甲斐犬に対するご質問、随時受け付けてます。
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